〜かなえられない恋のために〜

初めてのエッセイ集です。小説は好きなのにこれを読んで幻滅しましたっていうファンレター(?)をもらいました。
今まで生きてきた中で一番精神状態の悪い時に書いたもので、久しぶりに読み返してみたら、やっぱり回収して地底に埋めたくなりました(笑)。
エッセイをまとめてこんなに書いたのは初めてなんだけど、すごく難しかった。小説の方が全然楽。 小説は全部嘘だから何書いても人間性を疑われないけど、エッセイはそうはいかなくて、ディズニーランドが嫌いだと書いたら、そうか山本文緒は ディズニーランドに行かないのかと思われてしまう。当たり前なんだけど、それが結構恐いと思いましたね。その時はそう思っても今は全然そう思ってないってこともたくさんあるし。
この頃は本当にいろんなことに自信をなくしていて、前の三冊の本も全然売れなかったし、この業界っていうのはよっぽど才能があるか、よっぽど商才がある人以外は食べていけないんじゃないかなんて弱音を吐いてました。
デビュー以来ずっと何かアルバイトをしてたんだけど、とうとうそれも辞めちゃって、結婚生活も放棄して実家に帰って、親に住む所と食べ物を恵んでもらって次の長編を書いてました。 こんな私がエッセイなんか書く資格ないよなあと思ってましたし。まったくしょぼい。でも、エッセイだけど本を出してもらえたのが異常に嬉しくて、こんなに嬉しいんだからやっぱりこの仕事は絶対やめるまいと強く思いました。


この解説は、「月刊カドカワ」1997年3月号に掲載されました。
興味のある方は図書館などで読んでみてください。