〜きっと、君は泣く〜

これはKさんの手を離れてほとんど一人で作った初めての作品です。

私自身はものすごく好きな話なのに、あんまり褒めてもらえないのはなぜ?(笑)

これを書いている時は悲惨でしたね。 少女小説はもうきっぱりやめていたからお金がなくて、 かといって一般文芸の世界からはまだ全然認められていないから依頼も来なくて、結婚生活はもう末期で、 小説だけじゃ食べられないから会社勤めをして、書き上げるのに一年以上かかっちゃったんですよね。 いやー悲惨だった(笑)。

だからこそ、というか、仕方なくというか、テンションの高さはこれがいちばんだと思います。 『バイナップル〜』が今時の女性の仕事の話で『ブルー〜』が今時の女性の結婚の話だったから、 次は「性」だと思って書いたもの。

主人公を当時大全盛だったジュリアナで扇子振って踊っているような女の子にして、 そういう子の屈折と、彼女達には彼女達の論理があって、尻軽だとかパーだとか馬鹿にしてる 普通の人のほうがよっぽど品がないんじゃないかということが書きたかった。 付き合う女は軽くて奇麗ですぐ寝てくれるのがよくて、結婚はおとなしくて真面目なお嬢様とする、 みたいな普通の男の子達の感覚にぞっとしてた。 玉の輿に乗ることに命かけてる女の子が絶対その信念を曲げない格好のよさが書けたと思う。 女の子の美醜を決めるのは世間だけれど、その世間なんてどれほどのこともないじゃんって感じだった。 いやーテンション高いですねえ。


この解説は、「月刊カドカワ」1997年3月号に掲載されました。
興味のある方は図書館などで読んでみてください。