〜絶対泣かない〜

短編の面白さに目覚めた勢いで書き下ろした短編集です。 十五種類の違った職業の女の子を主人公にした短編で、 職業案内みたいなものになるといいなと思いました。体育教師、 専業主婦、女優、秘書なんかは想像で書けたけど、フラワーデザイナー、 営業部員、タイムキーパーなんかは取材したり資料を調べたり結構手間がかかりました。 デパート店員、エステティシャンなんかは自分の経験から思いついた話です。
私の本の中ではいちばんポジティブだと思います。唯一「元気が出る本です」と声を大にして言える。 あとの本は、読むと生きているのが嫌になる、みたいな本ばっかりですから(笑)。 デビューからずっと長編ばっかりを書いてきたんですけど、 ここへきて単行本二冊分の短編と、他社の雑誌二冊でまた 短編の連載をいただいて、一気に短編ばかり書くことになってしまいました。 極端なんだよなあ。
とにかく似てしまわないように、全部傑作というのは無理でも、ひどい出来というのだけはないように、 時々は「これはっ」というのを書けるようにと頑張りましたね。人の短編も勉強しようと思ってたくさん読んだし。
短編のいいところは、一回一回達成感があって、働く喜びみたいなものがあるのがいいですね。 長編だとずっとずっと長いこと苦しくて、すかーっとするのはできた時一回だけだから。 でも長編が書き上がった達成感っていうのは長持ちするし、いつまでも自信になる。 短編は書いたらすぐ忘れちゃいますからね。


この解説は、「月刊カドカワ」1997年3月号に掲載されました。
興味のある方は図書館などで探して読んでみてください。