〜ブルーもしくはブルー〜

これも引き続きKさんの編集です。
前回が普通のOLの生活を書いたから、今度はまったく違うものを書きたかった。で、ドッペルゲンガーの話。

自分でも不思議なんですが、私の本の中でこれが唯一現実離れした話なんです。
当時は恐れを知らなかったというか、今だったらこんな難しい設定の話は恐くて書けない。
でも当時は失敗するとか売れないんじゃないかとか、そういう事をまったく考えず、ただ書きたい、ただ楽しいっていう勢いだけで書きました。

そうしたら意外に受けが良かった。
書評でも褒められたし、読んだ人が皆「びっくり」してくれた。
いちばんびっくりしたのは私なんですが。

話自体は自分が二人存在するというファンタジー風なものなんですが、テーマはシンプルに「結婚」なんです。
ドッペルゲンガーものにしようという発想で始めたんじゃなくて、自分が二人いたら別々な人と結婚して二つの人生が送れるのにというところから発想したもの。
だからリアリティーをどう出そうかとそればっかり考えましたね。
現実によくあることを書き並べればリアリティーが出るわけじゃないし。

人は他人に嫉妬や羨望を感じるものだけれど、実はそれは自分自身に向けられているものだということが言いたかった。
自分が選ばなかった方の人生への未練みたいなものが上手く書けたらいいなと思いました。

いまだに、私の本の中でこれがいちばん好きだと言ってくれる人が結構います。


この解説は、「月刊カドカワ」1997年3月号に掲載されました。
興味のある方は図書館などで読んでみてください。