〜ブラック・ティー〜


 初めてのの短編集です。「月刊カドカワ」で連載させていただきました。 月カドから連載の話が来たときは本当に嬉しかったですね。 やっとここまできたか、と思った。大袈裟に聞こえるかもしれないけど、 文学賞を取ったわけでもベストセラーを出したわけでもない地味な作家には、 なかなか雑誌連載なんかもらえない世界なんスよ。
 初めての連載ということで、張り切ったのはいいんですけど、 私は長編ばっかりやってきてほとんど短編は書いたことがなかったんですね。 最初すごく不安だった。十話も続けて毎月短編が書けるんだろうかと心配になって、 資料を調べて下調べして、ものすごくちゃんと準備して書きました。 真面目というか小心者というか(笑)。
 テーマは軽犯罪で、山手線の中で置き引きをして生活してる女の子とか、 キセル、婚約不履行、伝染病を移すとか、人の留守番電話を勝手に聞くとか、 そういう話です。
 最初不安だったのに書きはじめてみたらすごく楽しかった。 書けば書くほど短編のコツみたいなものが分かってきて、 アイデアはどんどん出てくるし、今度はこんなものをやってみたい、 あんなものをやってみたいって、わくわくしましたね。
 ワンテーマを決めて雑誌に書いていってそれが単行本にまとまると、 また全然違ったものになるのが面白かった。 なるほど短編集とはこう作るのかって感心した。 なんか素人みたいな発言ですが。「ブラック・ティー」っていう タイトルは自分では格好いいと思うのに、あんまり褒めてもらえませんね(笑)。


この解説は、「月刊カドカワ」1997年3月号に掲載されました。
興味のある方は図書館などで探して読んでみてください。